なぞなぞ君の気まぐれメモ

この広い世界知らないことばかりなエッセイ

『神々の山嶺(いただき)』夢枕獏(角川文庫)を読んで 山の本#32

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同僚に借りてむさぼり読んだ漫画。谷口ジローの描き出す孤高のクライマー、羽生丈二(はぶじょうじ)の鬼気迫る生きざま。その後、十年の年月を経て、友人が譲ってくれた原作本の二巻がこれです。

さっそく飛びついてみると、谷口ジローのあの贅を尽くした紙面の使い方の謎がようやく解けたと感じました。あの情景描写は、とりもなおさず登場人物の心理描写だったのです。

冬期無酸素単独でエベレストの南西壁に挑む羽生。そして、羽生を執拗にファインダーに捉え続けながらも、実は自分の存在理由を追い求めている深町誠(ふかまちまこと)。その心象風景や神々の宿るヒマラヤの山嶺。そこに立ち向かうちっぽけな人間の大きな挑戦。

山に帰って行く深町はエベレストの山頂を目指す終章で、こう自問自答しています。何故、山に登るのか。何故、生きるのか。そんな問いも答えもゴミのように消えて、蒼天に身体と意識が突き抜ける。」

あとがきの市毛良枝さんは、こう書いています。「登山をはじめたばかりの私は、一瞬にしてこの本の虜になった。分厚い上下二巻を息を詰めて一気に読み終えた。自分がやるような山とは次元の違う、厳しい登攀とそれをめぐる壮大な冒険ロマンであるから、とても同じ土俵に立てるものではないが、その沸き上がるような熱い思いに隔たりを感じることはなかった。」

いちいちうなづいてしまう自分がここにいる。

Book Review #32
"Kamigami no Itadaki" Kadokawa Publishing Co.